フィリピン・アシジの聖フランシスコ・デフ・センターへ ようこそ!
2009年の終わりを真近かに控えて、今この1年間を思い返してみると、今年はフィリピン・アシジの聖フランシスコ・デフ・センターにとって、順調に事が運んだ年、また盛り沢山の出来事があった年でもあった。先ずは、当会の理事たちと会員から、弛まず当会を支えてくださっているすべての方々に心からの感謝を申し上げたい。また皆様が、意味あるクリスマスと幸せな新年を迎えられるようお祈り申し上げる。またこの報告書を通して皆様にも私どもの宣教の喜びを共に味わっていただきたい。
以下簡単に本年度の活動について報告させていただく。
1. 毎月、第一日曜日は、ケソン市クバオに在る聖ヨゼフ教会の建物内でろう者のためのミサを捧げている。それは手話という言語によるミサであって、一切発声しないミサである。聞こえる人にとっては奇異に思われるかもしれないが、聞こえない人にとっては、日常生活の延長にあることにすぎない。
2. 1月には札幌教区の高校生や青年リーダーたちが上杉神父様と共に当センターを訪問してくださった。彼らは、マザーテレサの会が設立した「ハウス・オブ・ジョイ」、タラにあるフィリピンで一番大きいハンセン病施設や病院、更には、線路わきの貧しい人々の家を訪問し交流を図った。
3. 1月24、25日には当会の理事会がマニラで開催された。主な議題は、カルバヨグ市カライマンの土地(アニタ・ラソさん所有)に関する用益権の最終原稿の検討と同地にろう者のための高等ろう学校開校についてであった。用益権の文章については、数回のやり取りの上、合意に至り、弁護士を介在し、正式な書類を作成した。〈写真〉
4. ろう者への奉仕続ける当会は、昨年の7月以来、5人のろう者と佐藤神父を補助教員としてダエット町に在るカマリネス・ノルテ・ステイト・カレッジへ派遣し、幼稚園レベル、小学校レベル(1、5&6年)、高校レベル(1&3年)を成功裏に教えることが出来た。しかし、ろう者補助教員たちが共に生活していた聞こえる人たちが、ろう者の生活態度に不満を述べ、人間関係が壊れてしまった。私たちは、彼らの差別的行動についてまとめ、学校に提出し、2月の中旬に残念ながらダエットにおける活動から撤退した。金銭的には2008年度の授業が終了するまで当会が授業料を支払った。
5.同2月、私たちは、トゥギガラオ市聖ルイス大学付属ろう小学校部を訪問し、3人の奨学生に面接した。彼女たちは、私どもが2002年に行ったサンタ・テレシータ町にあるフランシスカンの教会の担当地区で発見したろう者である。彼女たちが未だに小学2年と3年であるということは、教授方法にも問題があると思われる。〈写真〉
6. 同2月、私どものデフ・ミッションについての知識を向上させるために、アジア・パシフィック口話教育訓練に関する国際会議に出席した。それは、フィリピンで行われた最初の会議であり、また研修の場でもあった。目的とするところは、心理学的・教育的な分野に加えて対個人への教案とその実施のために、教師たちがろう児の必要を査定する能力を向上させることである。
7. 同2月、国税局の係官が現地調査のために私どもの事務所を訪れ、当会の会計に関する書類を調べ、毎年払わねばならない税金を免除申請するよう指導してくれた。
8. 当会はすべてのろう者に対して開かれている。3月の初め日本人ろう者、梶さん(男性)が当会のデフと共に1週間滞在し、他のデフとの交流も楽しんだ。
9. 韓国人ろう司祭ミン・ソォ・パク師を招いて、3月9-11日、ダバオ市リサール特殊学校の卒業記念黙想会をバギオと同じくらい涼しいブッダという山の中で開催した。ろう学生たちは、同じ環境にあるろう神父の手話に目を見開いていた。また、当会のアンジェラさんも自分の体験を語り、佐藤神父はイエスの受難手話劇について指導した。最終日には、赦しの秘跡とごミサが執り行われた。〈写真〉
10.3月29日、SAIDろう学校の卒業式ミサ及び聖ヨゼフ教会の赦しの秘跡とミサ。
11.4月9-10日、マニラの事務所にて総会を開催。本年度の活動計画について議論した。特に、カルバヨグ市カライマンにろう高等学校を設立する案を承認。これは、CKC学長の要請による。しかし、必要書類の作成に時間が必要。
12. 3月から5月まで、アンジェラ、ジョゼフィン、マイケル、キャサリン、ユーニスに対する英語の特訓が毎日行われた。というのは、アンジェラ、ジョゼフィン、マイケルの英語力は、教師になるための教育単位を取得するには、まだ不足だからである。3人は、今年、教員試験の単位及び小学部課程への編入を伸ばすことを決心した。キャサリンも大学入学をもう1年延ばすことを決断し、ユーニスのみがCKCに入ったが、個人的理由で継続することが出来なかった。ジョゼフィンは佐藤神父の秘書として仕事の訓練を受けることになり、また、会計担当のアデルファの下会計帳簿の作成や、領収書の整理で忙しく働き、アンジェラは、サンタ・テレシータ教会でリテラシイ・クラス(読み書きクラス)を引き受けることになった。キャサリンは、英文読解力と英語作文に力を入れることになった。
13. サマール出身で、元神学生のマリオは当会に加わり、手話通訳者としてろう者のために働き始めた。同じく、元神学生バシル・サンミン(韓国人ろう者)が体験学習のために当会の下でリテラシークラスを手伝うことになった。マリオとバシルは共にフィリピン手話の基礎コースを学んだ。
14. 今年の新たな事業としてリテラシークラスがカルバヨグ(リシェル)とサンタ・テレシータ(アンジェラ)で開催されている。〈写真〉
15. また。当会会員マリア・ロベッラ・ボアルハ(マベル)は、教員試験に向けて準備した。
16. ラサール大学聖ビニール校、3学年に所属するマービンの指導のもとに、リーダーシップ訓練やフィリピン手話のセミナーが開催された。(9時間x4週間)当会からは、アンジェラ、ジョゼフィン、キャサリン、マリオ、バシル、エルマー(カルバヨグから)が出席し、マニラ市の成人ろう者も参加した。
17. 7月27日~8月3日の間、フランシスコ会日本管区から阿部慶太師(海外宣教担当)が当会視察のため来比した。セブ・カルバヨグを回り、最後には、マニラで当会のろう者のためにミサを捧げてくれた。〈写真〉
18.8月17~31日、佐藤神父はミン・ソォ・パク師と共に、カンボジアとベトナムのろう者を訪問した。目的は、両国のカトリックろう者の調査である。凄惨な殺戮の過去を経て育った若い世代のろう者たちに出会った。メリノール会のプロジェクトとしてろう者に対するケアーが様々な面からなされているが、人道的な国復興が目的で、宣教という看板は極力掲げないようにして、多くの人がメリノールのプロジェクトに参加しやすいようになっている。プロジェクト担当者であるディトマイヤー神父さんとカンボジア手話の本の作成を目指しているタシーさんに案内していただいた。
ベトナムでは、フランシスコ会本部にお世話になり、フランシスコ会の兄弟たちにろう学校へ案内していただいた。ホーチミン市には、ベトナム手話をアイデンティとして集まるろう者のグループと難聴者とろう者が共に集うグループ2つの流れがある。私的にはマニラで共に勉強したフランシス・ガング神父(神学博士、ベトナム・フランシスコ会神学校校長)にも会うことができ、彼のおばさんの家で本当のベトナム料理を堪能した。いちばん先に出されたのは、蛙の肉であった。後はご想像にお任せする。
19. 8月26日、マベル、ジョゼフィン、マイケルはフィリピン大学の言語学討論会に出席。内容は障害者に対する障害者憲章の実践を求めるもので、特にろう者にとっては、フィリピン手話の教育とメディアへの導入が必要である。
20.9月12日、カルバヨグ司教イザベロ・アバルケスによってカライマンのデフセンターが祝別された。司教は、本当に素晴らしい牧者で祝別式に先立って、今までの様々な問題に触れ、分かち合い、励ましてくださった。私たちの特別のお役様は、何といってもアニタ・ラソさん(土地の所有者)とその姉ドクトーラ・フルジェンシオとその姉で一昨年亡くなったマーム・プリータのお嬢さん夫婦、ドロレス・バロナさんとマビリオ・ミエルさんである。みなさん若く小さなろう者との交流のひと時を初めての経験として心の底からよろこんでくれた。またフランシスコ会聖アントニオ管区の代表代理としてアルベルト・セキート神父(理事)の話は私たちの今後の宣教に力を与えてくれた。〈写真〉
21. 9月の後半の2週間、東京から矢嶋哲さんが訪問、積極的にろう者と交流した。また、サンタ・テレシータのリテラシークラスの見学、カルバヨグ・デフ・センター訪問の後、マニラに戻ったが、台風オンドイに遭遇、10時間足止め。
22. 祝別式後、サマール・デフ・ライフ・センター旗揚げの理事会が開催されたが、準備が十分でなく、まとまりのない会議になってしまった。理事会が出してきた、高校開設ではなく、小学部から始めようという改案については、将来を考えるとその方がはるかに教育的効果が上がるので了承することにした。
23. 同日、PSFADC理事会も開催した。前回の会議の議事録点検の後、会員の個人的な問題について討議し、決定した。
24. 10月9―21日までキダパーワン市のイースター・ビレッジ(佑川神父担当)にお世話になりながら、当会の黙想会、17-18日のジェネラルサントス市ノートルダム・カレッジにおける手話講習会(12名名参加)、ろう青年の赦しの秘跡・ミサの黙想会(35名参加)を開催した。また、最後には、会員同士の腹を割った分かち合いをし、今後についての決意を確認した。
25. 10月25日には、インターナショナル・デフ・ディに招かれ、ろう者と共にキリノ高校でごミサをささげた。またこの行事は、森壮也氏とその友人たち、すなわち日本のろう者たちの支援を受けて開催された。
26. 11月16日には、ラサール大学聖ビニール校で開催された第15回デフ・フェスティバルに招かれ、同校でごミサをささげた。
27. 佐藤神父は、11月20日,日本に帰国。
28. 11月23日東京喜多見教会でカトリック東京教区聴覚障害者の会の集まりで話す。